「魂を吐く」
亡くなったあの人は、秀才の空気を纏い、脇道に逸れる事もなく、蒸留水のような品行方正な学生時代を過ごして来たのだろうな。「石部 金吉」のように、堅く過ごしてきたのだろうな。あの人は特定の分野に一点集中で、仕事に取り組んできた、真面目な人である。しかし、何故か周囲の評判はあまり芳しくはなかった。不思議に思い、気の毒に想いながら、「何故、評価していないのか?」と聴いたところ、こう返ってきた。「あの人の話は、役人の説明で、政治家の話ではない!」と。ストンと落ちた。
かつて、中曽根 康弘が、保守合同前に、自らの政党の党勢が伸びない理由を、師と仰ぐ矢部 貞治に問うたところこう返ってきた。「君の政党は、多少気の利いた政策を訴えてはいるが、三木 武吉や大野 伴睦のようなデモーニッシュな(≒鬼気迫る)政治家がいないからだよ!」と。
政治家は明日を、未来を、平易な言葉で語らねばならない。過去の実績は、周りの支援者が宣伝すれば良い。政治家は、明日と未来の在るべき姿を提示し、現状を分析し、「その『差』をどう埋めていくのか?」、「現実を理想へとどう引き上げていくのか?」というロードマップを示す必要がある。日本列島は、「自動的」に、強く、豊かになる訳ではない。黙って、座っていても強く、豊かにはなれない。政治家だけの働きで強く、豊かになれる筈もない。1人1人の力が必要だ。1人1人の魂に火を点け、鼓舞する事も政治家の大切な仕事。東條 英機に単身で、立ち向かった政治家である中野 正剛に「魂を吐く」という著書がある。魂を吐く。1人1人の魂に刺さる言葉、そして、1人1人を鼓舞させる事こそ日本列島を強く、豊かにする。