「絨毯の皺」2025 4.7
「絨毯の皺」
2025 4.7

「絨毯の皺」
2025 4.7

「絨毯の皺」

 ケーキ職人の方から、「行き過ぎた円安をどうにかして欲しい!」と訴えられた。考えてみると、ケーキの原材料である「小麦粉」は、ロシアによるウクライナ侵攻により高値となり、「鶏卵」も、輸入飼料であるトウモロコシが異常気象により凶作が続き、ハウス栽培の「イチゴ」は燃料代が嵩み、ケーキを包む「セロハン」も石油製品であるが故に、為替相場の影響を受ける。ケーキは値上げをせざるを得ないが、お客さんの財布のヒモは、物価高騰により固い。瀬島 龍三氏が述べていた。「戦後日本は、『10』の原材料を輸入し、勤勉な労働力で、『1』の高く評価される製品を輸出し経済を成長させてきた!」と。円高は輸入にとって、円安は輸出にとってメリットがある。それにしても、経済・金融政策は加減が難しい。日本とアメリカの金利差により、円が売られ、ドルが買われる。日本の低金利政策により、お金は、株式購入に向かい、株価を押し上げ、莫大な運用益を産み、絶好調な税収に反映されている。全てが繋がっている。かつての「サブプライムローン」、「リーマンショック」は海の向こうの事と考えられていたが、派遣労働者を襲い、日比谷公園の「日雇い派遣村」を産んでしまった。

 お気楽な人々は、全てが繋がっている事を知ってか、知らずか、シングルイシューだけを訴える。その発言内容は、全く正しい。そして、シンプルだけにわかり易く心に響く。しかし、シングルイシューの解決は大切だが、それにより大きな副作用も伴う。副作用にどう対処するかを考える事が責任ある大人というものだ。「絨毯」の浮いた部分は、そこをたたけば、そこは、平に直るかもしれないが、どこかでポコッと、浮かびあがる。「直った!直った!」と得意になっても、どこかで歪みが必ず浮かび上がる。事態を解決するには全体を俯瞰し、手間はかかるが、四つのコーナーをキチンと引っ張って、浮いた部分を直す事が保守の良識だと思う。