「裁定」2024 7.9
「裁定」
2024 7.9

「裁定」
2024 7.9

「裁定」

 ある出来事を見て、「裁定」という言葉を調べてみた。「裁定とは、物事の善悪、可否を判断して決める事」とある。善悪、可否という物差しで、計れる分野ではないかもしれないが、政治の世界で、「裁定」が行われ、ストンと落ちた事があった。田中 角栄内閣が、金脈政変で倒れ、福田 赳夫と大平 正芳が後継総裁を争う中、椎名 悦三郎副総裁がクリーンと言われていた三木 武夫を指名した「椎名裁定」。衆参ダブル選挙で圧勝し、総裁任期が1年延長された中曽根 康弘総裁の後釜を、ニューリーダーと呼ばれていた、竹下 登幹事長、安倍 晋太郎総務会長、宮澤 喜一大蔵大臣の三者が各々の話し合いで、決着が付けられずに総裁に白紙一任された「中曽根裁定」。 民主主義は、最終的には、投票により決定される事が原則であろうが、その時々の状況で、「数」で決めずに「裁定」を仰ぐ事もある。 裁定が力を持つ者に一任され、そして裁定が下され、その結果が受け入れられるためには、環境が整っている事が大切である。まず、勝負をしているAさん、Bさんが、各々、優劣をつけがたい、悪い表現をすれば、団栗の背比べである事。当事者間(仲間を含めて)で決着を付けられない事が当然の条件となる。そして、次に、決定を委ねる者に白紙一任される事。裁定に従う事を条件に、委ねられなければ、誰も裁定を下せない。最後に、白紙一任を受けた者が、Aさん、Bさんよりも圧倒的に力を持っている事であろう。裁定に不服であっても、Aさん、Bさんが反乱を起こしても、裁定者には、勝てないからこそ、裁定が、渋々でも受け入れられる事になる。 ガチンコ勝負は、最も民主的である事は間違いない。裁定が、ブラックボックスと批判される事も理解出来る。しかし、分裂、分断を避けるために、「裁定」という手法も、1つの知恵なのかもしれない。